CHausにおけるカノニカル位相とコヒーレント位相の一致の厳密な証明

1. 単なる結合全射に対する有限部分被覆の反例

まず、私が前回提示した「任意の結合全射の族が有限部分族を持つ」という定義が、$\mathbf{CHaus}$において一般には成立しないことを、明確な反例を用いて示します。

例 1.1: 点の包含射からなる族 (The Sieve of Points)

無限個の点を持つコンパクトHausdorff空間、例えば閉区間 $X = [0,1]$ を考える。各点 $x \in X$ は単元集合 $\{x\}$ をなし、これも自明にコンパクトHausdorff空間である。

任意の $x \in X$ に対して、自然な包含写像 $f_x: \{x\} \hookrightarrow X$ を考える。この射の族 $\{f_x\}_{x \in X}$ の像の和集合は明らかに $X$ 全体となるため、この族は集合論的な意味で結合全射 (jointly surjective) であり、圏 $\mathbf{CHaus}$ における結合エピ射 (joint epimorphism) でもある。

しかし、この族からいかなる有限個の射を取り出しても、その像は $X$ 内の有限個の点に過ぎず、$X$ 全体を覆うことは決してできない。したがって、「任意の結合全射の族が有限の結合全射な部分族を持つ」という性質は、$\mathbf{CHaus}$ の無限空間においてはである。

2. 正しい圏論的定理の定式化

上記の反例が示す通り、$\mathbf{CHaus}$ において位相空間のコンパクト性を圏論的に翻訳する際、単なる「結合全射」を対象にすることはできない。Topos理論 (Mac Lane & Moerdijk, Johnstone) において真に重要となるのは、層の条件を完全に満たすような被覆、すなわち「有効エピふるい (effective epimorphic sieve)」である。定理の正しい姿は、「$\mathbf{CHaus}$ においては、有効エピふるいは必ず有限の結合全射な族を含む」という形をとる。

定義 2.1: 有効エピふるい (effective epimorphic sieve) とカノニカル位相

圏 $\mathcal{C}$ における対象 $X$ 上のふるい $S$ が有効エピふるいであるとは、$X$ が図式 $S$ (すなわち $S$ に含まれるすべての射と、それらの間の可換な射からなる図式) の余極限 (colimit) として自然に同型になることをいう。式で表せば以下のようになる:

$$X \cong \mathrm{colim}_{f \in S} \mathrm{dom}(f)$$

すべての有効エピふるいを被覆として指定するGrothendieck位相を、カノニカル位相 (canonical topology) $J_{can}$ と呼ぶ。

定義 2.2: コヒーレント位相 (coherent topology)

対象 $X$ 上のふるい $S$ がコヒーレント位相 $J_{coh}(X)$ に属するとは、$S$ が有限個の射の族 $\{f_i : X_i \to X\}_{i=1}^n$ を含み、その像の和集合が $X$ 全体を覆うこと (すなわち、有限族が結合的に全射であること) である。

3. 定理:CHaus における $J_{can} = J_{coh}$ の証明

これより、$\mathbf{CHaus}$ において有効エピふるいが必ず有限の結合全射な族を含むこと、すなわち $J_{can} = J_{coh}$ となることを、一切の省略なく証明する。

定理 3.1

コンパクトHausdorff空間の圏 $\mathbf{CHaus}$ において、カノニカル位相 $J_{can}$ とコヒーレント位相 $J_{coh}$ は一致する。

証明:
$J_{coh}$ が劣カノニカル (subcanonical) であることは一般の正則圏において知られているため、$J_{coh} \subset J_{can}$ は成り立つ。したがって、任意の有効エピふるい $S \in J_{can}(X)$ が、有限な結合全射の族を含むこと ($S \in J_{coh}(X)$) を示せばよい。

背理法を用いる。$S$ が有効エピふるいであるにもかかわらず、$S$ に含まれるいかなる有限族も $X$ を覆わないと仮定して矛盾を導く。

ステップ1:関数環の極限への翻訳
$S$ が有効エピふるいであるということは、$X \cong \mathrm{colim}_{f \in S} \mathrm{dom}(f)$ であることを意味する。共変関手 $\mathrm{Hom}_{\mathbf{CHaus}}(-, [0,1])$ は余極限を極限に変換するため、実数値連続関数のなすBanach環 $C(X) = \mathrm{Hom}(X, [0,1])$ について、以下の同型が成立しなければならない:

$$C(X) \cong \lim_{f \in S} C(\mathrm{dom}(f))$$

この極限 $\lim_{f \in S} C(\mathrm{dom}(f))$ の元とは、各 $f \in S$ に対する連続関数 $h_f: \mathrm{dom}(f) \to [0,1]$ の族 $\{h_f\}$ であって、射の合成に対して適合している (すなわち $f \circ g = f'$ ならば $h_{f'} \circ g = h_f$ となる) ものである。

ステップ2:弱位相による適合族の構成
各 $f \in S$ に対し、その像を $M_f = f(\mathrm{dom}(f))$ とする。$\mathrm{dom}(f)$ はコンパクトであるため、$M_f$ は $X$ の閉部分集合である。和集合を $M = \bigcup_{f \in S} M_f \subset X$ とする。
適合族 $\{h_f\}$ は、部分集合 $M$ 上の単一の関数 $h: M \to [0,1]$ を一意に定める (各 $x \in M_f$ に対し $h(x) = h_f(f^{-1}(x))$ とすれば、適合性から well-defined となる)。ここで $M$ には、$S$ に由来する弱位相 (weak topology) が入っているとみなせる。すなわち、関数 $h$ が極限の元であることと、$h$ が $M$ の弱位相において連続であることは完全に同値である。上記の同型 $C(X) \cong \lim C(\mathrm{dom}(f))$ は、弱位相で連続な任意の関数 $h: M \to [0,1]$ が、$X$ 全体の連続関数 $\tilde{h} \in C(X)$ へと一意に拡張できることを要求している。

ステップ3:有限被覆を持たないことからの矛盾の導出
仮定より、$S$ のいかなる有限族をとっても、その像の和 $M_{F} = \bigcup_{f \in F} M_f$ は $X$ 全体を覆わない。
ここで $X$ のコンパクト性を用いる。「すべての $x \in X$ について、ある開近傍 $U_x$ が存在して、それが何らかの有限和 $M_F$ に含まれる」と仮定すると、$\{U_x\}$ は $X$ の開被覆となり、有限部分被覆 $\{U_{x_1}, \dots, U_{x_k}\}$ がとれる。するとそれらを包む有限和 $M_{F_{x_1}} \cup \dots \cup M_{F_{x_k}}$ が $X$ 全体を覆うことになり、仮定に反する。
したがって、ある特定の点 $x^* \in X$ が存在し、$x^*$ のいかなる開近傍も、任意の有限和 $M_F$ に包まれることはない。

この性質により、$x^*$ に収束する点列 $x_n \to x^*$ と、対応する $S$ の有限部分族の増大列 $F_1 \subset F_2 \subset \dots$ を以下のように帰納的に構成できる:
$x^*$ の開近傍系から近傍を狭めつつ点を選ぶ。各 $n$ について、$x_n \notin M_{F_n}$ となるように選ぶことができる (なぜなら、もしすべての近傍内の点が $M_{F_n}$ に属するなら、近傍全体が $M_{F_n}$ に含まれてしまい、$x^*$ の性質に反するからである)。
選ばれた点からなる集合 $A = \{x_1, x_2, \dots \}$ を考える。$x_n \to x^*$ であるため、$A$ の $X$ における集積点は $x^*$ のみである。

ここで、任意の有限族 $F \subset S$ を固定する。有向性により、$F \subset F_m$ となるような $m$ がとれる。構成より、すべての $n \ge m$ に対して $x_n \notin M_{F_n} \supset M_{F_m} \supset M_F$ である。したがって、
$$A \cap M_F \subset \{x_1, \dots, x_{m-1}\}$$
となり、$A$ と $M_F$ の共通部分は常に有限集合 (したがって閉集合) となる。
これは、$A$ が $M$ の弱位相において閉かつ離散な部分空間 (closed and discrete subspace) であることを意味する。

ステップ4:拡張不可能な関数の構成
$A$ が $M$ の弱位相で閉かつ離散であるため、$M$ 上の弱位相連続な関数 $h: M \to [0,1]$ を、以下のように自由に定義できる (Tietzeの拡張定理などにより $M$ 全体へ連続に拡張可能):
$$h(x_n) = \begin{cases} 0 & (n \text{ が偶数のとき}) \\ 1 & (n \text{ が奇数のとき}) \end{cases}$$
ステップ2より、$S$ が有効エピふるいであるならば、この $h$ は $X$ 上の連続関数 $\tilde{h} \in C(X)$ へと拡張できなければならない。
しかし、$X$ において $x_n \to x^*$ であるから、$\tilde{h}$ が連続であるためには、数列 $\tilde{h}(x_n)$ は $\tilde{h}(x^*)$ へと収束しなければならない。ところが、
$$\tilde{h}(x_n) = h(x_n)$$
は 0 と 1 を振動し続けるため、決して収束しない。これは決定的な矛盾である。

したがって、背理法の仮定は誤りであり、$S$ は必ず $X$ を覆う有限部分族 (コヒーレント被覆) を含まなければならない。これにより、$J_{can} = J_{coh}$ が完全に証明された。証明終

参考文献